私はホットケーキを焼く匂いに、泣いた。
私の両親は、激烈に不和だった。
母親の浮気が原因だったけれど、
当時、小学校低学年・ひとりっ子の私は
両親の殺すか殺されるか、という
大喧嘩を前にどうすることも出来ず、
ただ「やめてー」と泣き叫ぶしかなかった。
この時、私は
「一刻も早く大人になろう」と思った。
皆、よく「子供の頃に戻りたい」
「人生やり直したい」と言うが、
私は全くそう思わない。
親の自殺未遂の現場まで見て、
「死のうか」とまで言われたあの頃に
帰ろうとは全く思わない。
ある日、父親と家の外に出ると、
向かいの家からホットケーキを
焼く匂いがしていた。
私は、泣けて泣けて仕方なかった。
「なぜウチだけこんななんだろう」
自分の境遇を呪った。
泣く私に、父親がどうしたのかと
声をかけて来たが、
「ホットケーキの匂いがして…」
と言っても通じる訳がなく、
「ホットケーキくらい焼いてやるたい！」
と言った。
父親はわかってくれなかった。
それ以来、私は他人や異性との
接触を出来る限り避けた。
社会人になるまで。
それは今でも続いていて、
だいぶほぐれて来たとはいえ、
40年近くかかった。
自分を愛でる＝相手を愛でる
センシュアルアロママッサージを
始めてからだ。
まずは自分を癒し、相手と溶け合う。
香りとタッチの効果は
計り知れない。
そして、夫婦はいさかいを子供に
見せるくらいなら、関係を解消したほうが
良い。
しかし、子供は
見なくても
雰囲気で察する。
鈍感な大人よりも、
子供のほうが敏感だ。
子供を大人の犠牲にするな。
「子供のために」別れない夫婦なんて、
子供から見ても全く意味を成さない。
別れない理由は、「子供のため」ではなく、
世間体のため。
無意味な夫婦関係は、
子供自身の、将来の異性関係にも
大きく影響する。
それで私は、ずっと男をイカせることで
異性間の恨みを昇華させて来たのだと思う。
それが、皆の知りたいことになり、
男女の不和にも役立つなんて、
思ってもいなかったけれど。
その時は辛くても、人生には全て
学びと意味がある。
私の場合、ちょっとヘヴィーだったな…。
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